「TENBLANKは確かに存在した」ライブレポートから見える『グラスハート』の凄み

2025年10月11日、横浜・ぴあアリーナMM。この夜、多くのファンにとって、Netflixシリーズ『グラスハート』の世界が「現実」となりました。劇中バンドTENBLANKが、孤高の天才音楽家・藤谷直季(佐藤健)、努力のカリスマギタリスト・高岡尚(町田啓太)、超音楽マニアの孤独なピアニスト・坂本一至(志尊淳)、そして大学生ドラマー・西条朱音(宮崎優)という、ドラマで演じた姿そのままに、現実のステージに降り立ったから。

一夜限り、昼夜合わせて1万8000人を熱狂させた「TENBLANK from “Glass Heart” FAN MEETING」。その本質は、ファンミーティングを超えた「音楽ライブ」でした。ドラマの「聖地」でもあるぴあアリーナMMのステージに現れた4人は、アイドルのファンミーティングにありがちな企画モノではなく、ガチのライブパフォーマンスで観客の度肝を抜きました。佐藤健さん、町田啓太さん、志尊淳さんというトップ俳優陣と、本格的な演奏で西条朱音を体現した宮崎優さん。彼らが披露した「MATRIX」や「旋律と結晶」といった楽曲は、映像作品の“劇中歌”という枠を超え、魂を揺さぶる本物のロックとして響き渡りました。

特に驚かされたのは、その演奏のクオリティです。俳優業の傍ら、わずかな期間でここまでのバンドアンサンブルを仕上げた彼らの努力は計り知れません。佐藤健さんがベースを弾きながら高らかに歌い上げ、町田啓太さんが激しいギターリフをかき鳴らす。志尊淳さんは時にキーボードからベースに持ち替えグルーヴを生み出し、宮崎優さんのドラムはドラマそのままのアグレッシブさでバンドを牽引します。彼らは、劇中のキャラクターになりきるだけでなく、本気のアーティストとして観客に向き合っていたのである。

ライブの合間に見せるトークやゲームコーナーでは、一転して和気あいあいとしたメンバーの素顔が垣間見え、ドラマとは違った絆を感じさせました。志尊淳さんの「西条朱音」モノマネなど、仲の良さが伝わる企画は会場は笑いの渦に巻き込みましたが、それもまた、後半の熱い演奏への助走となりました。そして、アンコールで響いた「永遠前夜」や「約束のうた」で、この奇跡の一夜は最高潮に達します。彼らは最後に「僕たちは今日のこと、今日までの日々を忘れません。出会ってくれてありがとう。もしまた会えたら、そのときはまた、一緒に歌おう」とメッセージを残しました。このライブは、TENBLANKがドラマの幻想ではなく、確かにこの世界に存在し、私たちに熱い音楽を届けてくれたという「存在証明」の場となりました。彼らの言葉通り、ファンはきっと、”また会える日”を待ち続けることでしょう。この夜の熱狂は、彼らとファンにとって、決して忘れられない「永遠前夜」となったはず。